2011年7月25日月曜日

中学家庭科きもの授業を実施

6月27・28日
札幌市立稲積中学で市内2校目となる技術家庭科きもの授業が行われました。

1年生129名を対象に講義からスタート、
小学校で蚕を育てた経験のある生徒さん達も多く
既に授業の中で繊維について学んでおり
きものの素材としての「絹」の説明に
改めて生物の命と自分たちの生活の関わりを意識した様子でした。


1年生ということもあり、実技でははしゃぐ生徒も見られましたが、
家庭科教諭の積極的な働きかけで実施された今回の授業は
担任の男性教諭も自ら浴衣を着装するなどのサポートもあり
きものを日本の伝統文化として捉えるきっかけになったことと思います。


日頃目にすることも少ない和装は新鮮だったり不思議だったり…
今回の経験を体中にしっかりと染み込ませ
“日本人”としての精神を育んでいただきたいと願っています。


このあとも実施を予定している中学校が控えており
伝統文化の裾野が広がっていくことが期待されます。


2011年7月6日水曜日

教育大学で講演

6月16日 国立大学法人北海道教育大学札幌校講堂において
宮島理事長による講演「きもの、時空を超えて」が開催されました。
総合学習概論という授業科目の中で行われた特別講演には
教育者を目指し門をくぐられたばかりの一年生を始めとする学生の他
地域の一般の方々にも開放されました。

 

冒頭
学生さん達と同世代の頃のアルバイト先で受けたカルチャーショックが
現在のご自身の研究活動の原点となった経験に触れ
日本独自の生活様式から生み出されたきものが
日本人としてのアイデンティティを育む役割について語られました。



講演会場には平安時代の少女の正装である汗衫姿が展示されており
濃色の長袴の上に男子用の袴を重ねたり
衿元が男子のように丸首の形になっていたりと
女子の服でありながら男性の要素を持つことから
まだ性別をはっきりと区別しない少女の衣装であること、
4m50cmもの長さの裾に気を配りながらの起居動作が
心身に多大な影響を与え
これが女性としての「躾」につながることを説明。
ここから、服飾は自我の表出であると共に
着装の仕方による公私の区別の重要性についても説かれました。

質疑応答では、
未婚・既婚の別を明確にする振袖と留袖の理由など基本的な事から
研究対象である生地組織についてや
きものを着用することによる健康への影響についてなど
活発に質問があげられました。

 

講演終了後も
なかなか近くで見る機会のない時代衣裳の展示とあって
実際に手を触れ素材感を確かめたり、
重ね着の構成を探ったりと
非常に高い関心を持って見学されていました。



後日寄せられたレポートでは
「義務教育で日本の文化に直接触れる授業は少なかった」自身を振り返り、
「自分の4m後方を着配る心が日本人特有の思いやりや
おもてなしの心を生んだ」ことに感銘を受け、
「この文化をこれからこの国を担う子供に伝えていける人間になりたい」
と、率直に語られていました。
「この講演を機に自分の心に大きな変化を感じた」との感想もあり
教育の現場で、日本の服飾文化通し
自分のあるべき姿を改めて考えていただける
貴重な機会を頂戴し大変嬉しく感じております。

きものDoでは中学家庭科授業内でのきつけ・マナー授業や
高校での浴衣きつけ講座を実施しており
これらの活動の重要性を再認識することがでました。
ありがとうございました。







2011年7月4日月曜日

「十二単」着装体験

去る6月17~19日
「第26回日本伝統衣裳の復元・きもの展」にて
「特別講演と十二単姿体験」が開催されました。



NPO法人日本時代衣裳文化保存会理事長であり
小林豊子きもの学院学長、
さらに着装道宮島流衣紋宗家である宮島健吉先生による
特別講演「時代衣裳を通して語り伝えたい“日本の心と美”」
にお集まりいただいた沢山の方々に
十二単の着装を体験していただきました。



十二単の俗称で知られる「唐衣裳装束」は
正式に着用すると10kgを超える重さ。
平安時代の宮中では、私的な時間には袿から抜け出し
外した袿は着た時の形状をキープ、
公に出る際にはそのまますっぽりと羽織り元の姿へ
という事が繰り広げられていたとか。



いわゆる蛻の殻(もぬけのから)の語源であるとも言われる
「裳抜けの空」の状態ですが
宮島先生はこれを源氏物語の中で
光源氏の愛を拒み、薄衣一枚を脱ぎ捨て逃げ去った女性になぞらえ
「空蝉(うつせみ)」と呼びます。

空蝉の身をかへてける木のもとに なほ人がらのなつかしきかな
     ― セミが脱け殻を残して姿を変え去った後の木の下で、
         もぬけの殻の衣を残していったあの人の気配をやはり懐かしく思う

講演で語られた、重たい衣裳を「着続けること」
すなわち「しつづける」が「しつけ(躾)」に結びつくことに通じる
なんとも慎み深く品の良い振る舞いでありながら、
本人の矜持が強く感じられる行為です。



3人の衣紋方による着装は「陰」である右手から腕を通すなど
全て「陰陽道」に基づき進められます。

着装実演を担当してくださいましたのは
作法に則った美しい所作はご観覧のお客様を魅了していました。


ご協力ありがとうございました。